WEB版

うつ病
うつびょう

最終編集日:2026/3/31

概要

うつ病は、日本うつ病学会のガイドラインで「継続的に気分が落ち込み、思考・行動が停滞することにより、日常生活や社会生活における機能に障害を引き起こす病気」と定義される、「気分障害」のひとつです。

わが国の生涯有病率(一生のあいだにその病気にかかる割合)は5~6%、女性が男性の約2倍といわれています。

うつ病は重症度にあわせて、軽度うつ病、中等度・重度うつ病に分類されます。また発症の時期にあわせて、児童・思春期うつ病、周産期うつ病、老年期うつ病に分けることもあります。大うつ病(大うつ病性障害)という言い方もありますが、うつ病と同じ意味です。

原因

うつ病の原因はまだ明らかになっていませんが、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなど)のバランスが崩れることに加え、環境的要因と遺伝的要因、心理的・身体的要因が絡みあって発症のきっかけになるとされています。

●環境的要因

仕事や学校、家庭でのトラブル、対人トラブル、過労、過度なストレス、睡眠不足、生活リズムの乱れ、ライフイベント(引っ越し、異動、転校、受験、結婚、出産、離別、死別、事故ほか)など。

●心理的・身体的要因

その人の性格(責任感が強い、完璧主義、他人への気遣いが多い、几帳面など)、糖尿病や心疾患などの慢性の病気、慢性疼痛、がんなどの重篤な病気など。

●遺伝的要因

うつ病の発症には、遺伝的要因が35%程度関与しているとされています。第一度近親者にうつ病の人がいると、いない人にくらべて約2.8倍の発症リスクになるという報告もあります。

症状

精神的な症状だけでなく、通常、身体的症状もみられます。身体的症状が先に現れる場合もあります。

●精神的症状

気分の落ち込み、憂うつ感、何事にも興味がわかない・関心がもてない、やる気・意欲が出ない、いらいら、焦燥感、自分には価値がないと思う、決断できない、死にたいと思う(希死念慮)など

●身体的症状

不眠や過眠などの睡眠障害、倦怠感、疲労感・疲れやすい、頭痛・肩こり、動悸、集中できない、食欲低下、過食、胃の不調、便秘・下痢、性欲低下など

検査・診断

症状や生活状況などの問診で、「落ち込んだ気分」、あるいは「興味や喜びの喪失」のどちらかがある/ほとんど1日中不調な状態が2週間以上続く/からだの不調を伴う/ほかの病気がないなどの場合に、うつ病を疑います。

診断には米国のDSM-5という診断基準が用いられます。

うつ病のような症状を現す病気には、パーキンソン病などの神経変性疾患、脳出血・脳梗塞、甲状腺機能低下症月経前症候群、アルコール依存症など、さまざまなものがあります。また、双極性障害、認知症、不安症など、ほかの精神疾患でもよく似た症状がみられることがあります。そのため、血液検査、尿検査、心電図、脳波測定、頭部のCT・MRI検査や、心理検査(WAIS-Ⅳ検査、改訂長谷川式簡易知能評価スケール、ミニメンタルステート検査など)を行って、ほかの病気でないこと、あるいは合併していないことを判断してから確定診断が下されます。

治療

治療は十分な休養と薬物療法(薬による治療)、精神療法が行われます。治療期間として次のような目安が挙げられています。

【急性期】発症から症状が落ち着いて寛解(完治はしていないが、症状が軽減されて安定した状態)に至るまで。6~12週間。

【持続治療期】一度寛解に至ってから4~12カ月。

【維持療法期】寛解を保って1年以上経過したもの。再発のリスクが低い場合に治療の終了を検討。


●休養

うつ病治療では脳を休ませることが不可欠と考えられています。休養をとることで、脳内の神経伝達物質のバランスが改善されるといわれています。また、体力を回復させ、ストレスから遠ざかることもできます。しかしうつ病に特有の思考回路として、また患者さんの性質として、「仕事や学業が気になって、かえって休めない」「自分の勝手でゆっくり休むわけにいかない」「いま休むと申し訳ない」などと考えて、十分な休養をとるのがむずかしいケースも少なくありません。どうしても休めない場合には入院が必要になることもあります。

●薬物療法

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)、ノルアドレナリン・特異的セロトニン作動薬(NaSSA)、三環系抗うつ薬、抗不安薬などを用いて、神経伝達物質のバランスを取り戻します。重症度、副作用、患者さんの年齢、生活状況などを考慮して薬が選択されます。多くの薬は効果が現れるまでに2~4週間を要するため、医師の指示にしたがって焦らずに服用します。

また、うつ病の身体症状として訴えが多い睡眠障害に対しては、寝つきが悪い、熟睡感がない、途中で起きてしまうなど、症状にあわせた薬が選択されます。近年では、副作用が少なく、睡眠障害だけでなくうつ病の症状の軽減にも効果が期待できる、睡眠改善薬(オレキシン受容体拮抗薬)も登場しています。

●精神療法

認知行動療法や対人関係療法、カウンセリングなどで、うつ病になりやすい否定的な思考パターンを見直したり、ストレスのもととなることがらを見つけて改善策を考えたりします。

●入院が必要なとき

症状が重く、食べる・眠るといった生活の基本ができないとき、十分な休養がとりにくいとき、希死念慮があるときなどは、入院が必要とされます。

●維持療法

うつ病は再発率が約60%といわれます。一度寛解に至ったら、その後も再発を防いで良い状態を保つ「維持療法」が行われます。うつ病の重症度によりますが、寛解後、半年~3年程度、治療を続けます。この間、勝手に服薬を中断したり、量を変更したり、通院をやめたりしないようにします。

●TMS治療(反復経頭蓋磁気刺激法)

18歳以上の難治性(薬物療法の効果がない)のうつ病が対象になります。脳の特定の部分に磁気刺激を繰り返し与えることで、神経細胞の働きを取り戻す治療法です。

セルフケア

予防

うつ病はだれでもかかる可能性のある病気です。精神的に厳しい状況にあって、さまざまなからだの不調が2週間以上続くようなら、「簡易抑うつ症状尺度(QIDS-J)」を用いてセルフチェックをしてもよいでしょう。QIDS-Jはウェブ上で検索することができます。

うつ病かもしれないと思ったら、精神科やメンタルクリニック、心療内科などを受診しましょう。早期発見して早期に治療を開始すれば、早期に回復する可能性が高まります。

Xで送る
LINEで送る
Facebookで送る
URLをコピー

監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成