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双極性障害
そうきょくせいしょうがい

最終編集日:2026/4/20

概要

双極性障害は、気分・行動・思考が低下する(落ち込む)「うつ状態」と、亢進する(高まる)「躁状態」を繰り返す病気です。かつては「躁うつ病」と呼ばれていました。

また、国際的な基準に基づいて、今後、「双極症」へ名称が変更されることになっています。

躁状態、うつ状態のほかに、躁の症状が軽い「軽躁状態」、躁とうつが混ざる「混合状態」、躁とうつ、どちらの症状もない「寛解状態」を複雑に推移していきます。


躁状態の程度によって、双極Ⅰ型障害と双極Ⅱ型障害に分けられます。

・「双極Ⅰ型障害」……生活に支障をきたすほどの激しい躁状態を現すもの

・「双極Ⅱ型障害」……軽躁状態(軽度な躁状態)と長く続くうつ状態を現すもの


多くは最初にうつ状態が現れます。次の状態に推移する期間は、患者さんによって週単位から年単位までさまざまで、個人差があります。

わが国では10代後半から20代前半での発症率が高く、男女差はありません。生涯有病率(一生の間にその病気にかかる割合)は約0.6%とされています。

原因

原因は現時点では不明ですが、何らかの遺伝子変異により、脳の神経細胞の連携や神経伝達物質の機能不全、神経細胞の興奮を調節する部位の機能障害などが起こり、発症するのではないかと考えられています。

親が双極性障害である場合、そうでない場合とくらべて子どもの発症率は約10倍になることがわかっており、遺伝的素因の関与があるとされています。

症状

気分・行動・思考において、うつ状態と躁状態、軽躁状態、混合状態、寛解状態を繰り返します。それぞれに次のような症状がみられます。


●うつ状態(抑うつ)

気分が落ち込む、気力がなくなる、何事にも興味をもてない、自分を責める、自己否定、食欲不振・過食、不眠や過眠などの睡眠障害、疲労感が強い、死にたくなる(希死念慮)など


●躁状態・軽躁状態

気分が高揚してどんなことでもできる気がする、自己評価が上がる、寝ないで活動できる、頭のなかにいろいろな考えやアイデアが次々に現れる、注意や関心があちこちに飛ぶ、ギャンブルや買い物などで大金を使う、じっとしていられない、怒りっぽくなる、過度に社交的になるなど。軽躁状態はこれらの症状がそれほど強くないものを指します。


●混合状態

気分が落ち込む(抑うつ)、焦燥感がいっぱいでいてもたってもいられなくなる(躁)などのように、うつと躁が混在する症状です。衝動的に「死んでしまおう」と考え、実行に移すこともあり、注意が必要な状態です。


●寛解状態

一定期間、うつ、躁、どちらの症状もみられず、落ち着いている状態が続くものを「完全寛解」、軽い症状はあるが生活にそれほど支障がない状態を「不完全寛解」と呼びます。

検査・診断

くわしい問診から双極性障害が疑われたら、DSM-5やICD-11などの国際的なガイドラインに沿って診断が行われます。うつ状態が2週間以上、あるいは躁状態が1週間以上、または軽躁状態が1週間以上続くことが診断の目安になります。

とくに双極Ⅱ型障害では、双極性障害の診断は専門医でもむずかしいとされています。

最初にうつ状態が現れるケースが60%以上を占め、次の状態に推移する期間は個人差が大きく年単位で同じ状態が続くこともあることから、うつ病と診断される場合も少なくありません。


また、軽躁状態では躁の症状を「調子がよい状態」ととらえて躁であるという判断がつけにくいこと、不安障害などの合併症が多いこと、うつの症状がなく躁の症状のみを現す場合もあることなども診断をむずかしくする要因となります。


うつ病、ADHD(注意欠如・多動症)、アルコール使用障害(アルコール依存症)や薬剤の乱用などとの鑑別が重要です。

治療

双極性障害は再発を繰り返す特徴があり、完治がむずかしい病気です。症状を安定させて寛解状態に導く、寛解状態を維持して再発を予防する、そのうえで支障のない社会生活を送れるようにすることが治療の目標になります。

症状を改善し、再発を防ぐために、薬物療法と心理社会的療法が行われます。


●薬物療法

うつの落ち込みや躁の興奮状態を軽減し、気分の変動をやわらげる「気分安定薬」を基本として、うつ状態・躁状態のそれぞれに効果が見込める「非定型抗精神病薬」を組み合わせて用います。これらの薬は、再発予防を目的とした「維持療法」にも用いられます。

うつ状態の場合でも、基本的に抗うつ薬は使用しません。双極性障害を悪化させるリスクがあるからです。


●心理社会的療法

まず、患者さん本人が病気を正しく理解して受け入れ、治療の必要性を理解し継続できるようにするために、心理教育が行われます。自身の病状や生活状況などを客観的にとらえ、再発予防につなげる目的で、毎日の記録をとることもあります。また、対人関係を改善し、社会性を取り戻すための治療も行われます。


●入院加療が必要なとき

・重いうつ状態で、食事などの最低限の生命活動ができない、治療を受けられない、希死念慮が強い、自殺を図った、などの場合

・重い躁状態で、興奮が強く言動を抑制できない、浪費や人とのトラブルが続く、患者さん本人の安全性が保てない、などの場合

・混合状態で、自暴自棄な行為が多い、自殺のリスクが高い場合

セルフケア

療養中

双極性障害の患者さんは、症状をコントロールして寛解状態を保てれば、通常の生活を送ることができます。そのためには主治医とよい関係を築き、家族や周りの人のサポートを受けて、通院や服薬を継続する必要があります。

なお、双極性障害の患者さんが妊娠・出産を希望する場合は、あらかじめ主治医に相談して、妊娠の時期や薬の調整、妊娠中・出産後のケアやサポート体制の整備などをくわしく話し合って決めることが大切です。

病後

双極性障害では、病状の記録などで、再発につながる状況や自身の再発の徴候を知っておくことも重要です。例えば、再発のきっかけとして、薬の飲み忘れが重なった、繁忙期の後で過労状態だった、対人関係でトラブルがあったなどが挙げられます。再発の徴候としては、眠れないなどの睡眠障害、いらいらすることが増える、怒りっぽくなる、飲酒量が増える、買い物の数が増えるなどが挙げられます。これらは個人差が大きいため、自身の徴候を把握しておく必要があります。

予防

双極性障害は早期に治療を開始すれば、重症化を防ぎ、社会的なダメージを小さく抑えることができます。気分の落ち込みや抑えられないような気分の高揚が1~2週間続くようなら、精神科やメンタルクリニックを受診しましょう。

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監修

赤坂溜池クリニック 院長

降矢英成