慢性閉塞性肺疾患(COPD)まんせいへいそくせいはいしっかん
最終編集日:2026/3/12
概要
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、たばこの煙などの有害な物質を長期間吸い込むことで、空気の通り道である「気管支」や、酸素の交換を行う「肺胞(はいほう)」に炎症が起きる病気です。
かつて「肺気腫」や「慢性気管支炎」と呼ばれていた病気をまとめた総称で、その原因の9割以上が喫煙であることから「たばこ病」とも呼ばれる肺の生活習慣病です。
進行性の病気であることが特徴で、 放っておくとゆっくりと悪化し、一度壊れた肺胞は元に戻りません。 肺だけでなく、筋力の低下、心臓病、骨粗鬆症、うつ症状など、全身に影響を及ぼすことがわかっています。
日本では500万人以上の患者がいると推定されていますが、自覚されにくく、実際に治療を受けているのはその一部に過ぎません。息切れが起きても「年をとったせいだ」と見過ごされやすいことも特徴の一つです。
原因
最大の原因は喫煙です。喫煙者の約20%が発症するといわれており、吸い続ける期間が長いほどリスクが高まります。
また、 自分が吸わなくても、周囲のたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」により発症するリスクがあります。そのほか、 職業的な粉じん、大気汚染、遺伝的な要因、幼少期の呼吸器疾患などが関係することもあります。
症状
初期は自覚症状が乏しいですが、進行すると以下のようなサインが現れます。
・階段の上り下りでの息切れ
同年代の人と一緒に歩いていて遅れるようになると注意が必要です。
・長引くせき・痰
かぜでもないのに、毎日せきや痰が出ます。
・喘鳴(ぜんめい)
呼吸をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がします。

検査・診断
診断にはまず詳しい問診(喫煙歴や症状の確認)を行い、以下の検査を組み合わせて判断します。
・呼吸機能検査(スパイロメトリー): スパイロメーターという機器を使い、思い切り息を吸い込んで一気に吐き出し、空気の通りにくさを調べます。
・画像検査(胸部X線・CT): 肺が膨らみすぎていないか、肺胞が壊れていないかを確認します。
・血液検査: 血液中の酸素量や炎症の程度を調べます。
治療
壊れてしまった肺を完全に元に戻すことはできませんが、適切な治療で進行を抑え、呼吸を楽にすることが可能です。
最も重要なのが「禁煙」で、どの段階から始めても病気の進行を遅らせる最大の効果があります。
薬による治療(薬物療法)では、 狭くなった気管支を広げる「気管支拡張薬(おもに長時間作用型)」の吸入が中心です。症状や体質に合わせて、吸入ステロイド薬を併用する場合もあります。
呼吸リハビリテーションでは、 効率的な呼吸法(口すぼめ呼吸など)の練習や、息切れを防ぐための筋力トレーニング、栄養指導を行います。
重症化し、血液中の酸素が不足する場合には、酸素療法として自宅で酸素を吸入する治療を行います。
セルフケア
療養中
・禁煙
自力で禁煙するのが難しい場合は、医療機関の「禁煙外来」を利用しましょう。
・感染症の予防
かぜやインフルエンザ、肺炎はCOPDを急激に悪化させます。手洗い・うがいの徹底とともに、インフルエンザや肺炎球菌のワクチン接種が強く推奨されています。
・適切な体重と運動
COPDではエネルギーを多く消費するため、やせすぎに注意が必要です。バランスのよい食事と、息が切れない程度の散歩などを続けましょう。
・環境を整える
線香の煙、強い芳香剤、大気汚染など、肺を刺激するものを避けましょう。
●肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンは、命にかかわる重い肺炎や敗血症・髄膜炎などの合併症を防ぐ重要なワクチンです。特に高齢者やCOPDなど肺の病気がある人は重症化しやすく、接種が強く推奨されます。
肺炎の原因となる病原体は多様ですが、その中でも重症化のリスクが高く、重要な原因菌として位置づけられているのが「肺炎球菌」です。最近は、治療薬に耐性を持つ菌が増えており、予防が最大の治療とも言われています。
ワクチン接種が推奨されるのは①65歳以上の人と、②糖尿病・心臓病・喘息など持病がある人、喫煙者や免疫力が低い人などです。
市区町村によって助成制度は異なりますが、定期接種は65歳の人と、60~64歳で特定の基礎疾患を有する人が対象となります。
現在おもに使われるワクチンは「23価ワクチン」と「20価ワクチン」「21価ワクチン」の3種類で、2026年4月からは20価(定期接種)ないしは21価ワクチンを原則1回接種します。
副反応はインフルエンザワクチンと同程度で、数日以内に治まることが多く、重症化予防としてのメリットが大きいワクチンです。
※2026年3月12日時点の内容です。
予防
40歳以上で喫煙歴があり、「階段で息切れする」「せきや痰が長引く」といった症状がある人は早めに呼吸器内科を受診しましょう。早期発見が健康な生活を長く維持するための鍵となります。
監修
千葉大学病院 呼吸器内科 特任教授
巽浩一郎