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鉄欠乏性貧血
てつけつぼうせいひんけつ

最終編集日:2026/4/16

概要

鉄欠乏性貧血は体内の鉄分が不足し、赤血球中のヘモグロビンの産生量が減少することで起きる貧血です。ヘモグロビンの生成がうまくいかなくなると全身に十分な量の酸素を運搬できなくなるため、倦怠感やめまいなどの貧血症状が現れます。

月経のある年代の女性では、自覚症状がなくても体内の鉄が不足している人が少なくありません。そのため、鉄欠乏性貧血は貧血のなかでもっとも多い病気となっています。

原因

鉄欠乏性貧血の原因は、体内の鉄分不足です。鉄分が不足する理由には以下のことが考えられます。

●鉄分の摂取・吸収不足

鉄分は食べ物から摂取するほかなく、偏った食事によって摂取量が不足する、または病気の治療で胃切除などをしたことで吸収力が低下するため。

●鉄分の喪失量増加

月経や消化管出血によって喪失量が増加するため。

●鉄分の需要増加

成長期や妊娠・授乳に伴って必要な鉄分需要量が増加するため。

症状

おもな症状として、全身倦怠感、疲れやすさ、めまい、頭痛、動悸、息切れ、耳鳴り、顔面の蒼白などがあります。そのほか、爪が薄く平坦になる匙状爪(さじじょうづめ)や口角炎、嚥下障害、異食症(氷などの硬いものを食べたくなる)などの症状がみられることもあります。

ただし無症状の場合もあり、そうした人の多くは定期的な健康診断で発見されています。

検査・診断

採血による血液検査を行い、ヘモグロビン(血色素:Hb)の量などで診断されます。


ヘモグロビンの基準値(異常なし) ※健診機関によって異なります。

・成人男性:13.1~16.3g/dL

・成人女性:12.1~14.5g/dL


さらに、血液検査ではヘモグロビン値のほかに赤血球の大きさ(MCV)も調べます。貧血の場合は小さくなります。

採血による生化学的検査では、血清鉄やからだの中に蓄えられている鉄分の量を表す血清フェリチン値などを調べて実際に鉄が不足しているかどうかを調べます。


また、鉄欠乏性貧血の原因が胃がん大腸がんからの出血の場合もあります。そのため、重篤な病気が背景にないか調べるために、胃カメラや便潜血検査、大腸カメラなどが行われることがあります。ピロリ菌による萎縮性胃炎により、鉄の吸収に必要な胃酸が不足することで鉄が不足することもあるため、胃カメラの検査は特に重要です。

女性の場合は、子宮筋腫などによる過多月経や子宮頸がん、子宮体がんからの出血の可能性もあるため、婦人科での検査が行われる場合があります。

治療

鉄分を増やすため、治療はまず鉄剤の経口摂取(飲み薬)から始めます。胃切除後の場合や慢性胃炎によって胃酸が足りない場合には、ビタミンCと鉄剤を同時に飲むことで鉄の吸収がよくなることがあります。経口鉄剤では、胸やけや下痢、便秘などの症状がみられることがあります。こうした副作用のために鉄剤が飲めない場合や、飲み薬で改善しない場合には、注射による治療が行われることがあります。

薬による治療に加えて、食生活の見直しも重要です。

過多月経や消化管出血などによる慢性的な出血がある場合は、その原因に対する対処が必須です。

セルフケア

予防

鉄欠乏性貧血の予防には、食生活の見直しが不可欠です。鉄分は吸収率の低い栄養素のため、毎日の食事から十分にとることが必要です。

・栄養のバランスを考え、毎日3食をとる

・鉄分を多く含む食品をメニューに加える:レバー、赤身の肉類、かつおやまぐろ、あさり、しじみ、牡蠣、大豆製品、緑黄色野菜、海藻類などに多く含まれています。

・たんぱく質を十分にとる:魚、肉、卵、大豆製品、乳製品などのたんぱく質を多く含む食品を、毎食バランスよく食べるようにします。

・食事中にはタンニンを含む飲料(緑茶、コーヒーなど)を控える:緑茶や紅茶、コーヒーにはタンニンが多く含まれています。タンニンは鉄分と結合しやすいため、鉄分の吸収率が悪くなってしまいます。


貧血は重篤な病気の症状として現れることもあります。貧血を指摘された場合は早めに医療機関を受診することをおすすめします。

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監修

自治医科大学附属さいたま医療センター

吉村一樹