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麻疹(はしか)の感染者がニュースになる理由

最終編集日:2026/5/11

「○○市の20代の女性がはしかに感染」「○日に大型商業施設と公共バスを利用」というような、麻疹に関するニュースを目にすることがあります。なぜ、これほど警戒され、詳細に報道されるのでしょうか。麻疹の特徴を踏まえて解説します。


●麻疹の感染力は非常に強く、重症化リスクも

まず現在の状況ですが、国立健康危機管理研究機構の発表によると、2026年第14週(4月8日現在)の麻疹の報告数は累積236件に達し、前年同期の3.5倍以上という急ペースで流行が拡大しています。これは日本だけの現象ではなく、麻疹は世界的に流行しており、海外で感染した人によってウイルスが日本国内に持ち込まれるケースも増えています。

こうした流行を引き起こしている最大の要因が、麻疹の「感染力の強さ」です。

接触感染や飛沫感染だけでなく、麻疹は空気感染でも広がり、これが特に警戒される大きな理由のひとつとなっています。空気感染とは、空気中に漂う飛沫核(感染者がせきやくしゃみをしたときの飛沫の水分が蒸発したもの)を吸い込んで感染することをいいます。

飛沫核は小さくて軽いので、フワフワと空気中を漂いながら広範囲に広がります。そのため、免疫をもたない人が感染者と同じ空間にいると、非常に高い確率で感染が成立するとされています。感染者がその場を離れた後も飛沫核は浮遊し続けるため、例えば、感染者が電車を降りた後に、同じ車両に乗った人が感染することもあります。

1人の感染者は12〜18人(インフルエンザは1〜2人)にうつすといわれ、これが麻疹の怖いところです。

また、肺炎や脳炎などの合併症を起こして重症化することがある点も、麻疹の怖さです。脳炎は1000〜2000人に1人程度にみられ、死亡は先進国でも1000人に1~3人程度とされており、軽視できる病気ではありません。さらに、まれではありますが、数年から十数年後にSSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症することもあります。


●大人でも免疫がなければ感染する

麻疹は「子どもの病気」と思われがちですが、大人でも免疫をもっていなければ感染します。実際に2026年第14週時点の日本の感染者の86%は15〜49歳で、20代が約3割、30代が約2割を占めています※。その背景には、免疫をもたない人たちの存在があります。

現在、麻疹のワクチンは、MRワクチン(麻疹・風疹の混合ワクチン)を「1歳で1回+小学校入学前に1回」の合計2回接種することが、定期接種として実施されています。しかし、定期接種として2回接種の機会があるのは2000年4月2日以降に生まれた人であり、それより前に生まれた人には、1回接種世代や未接種の人が含まれます。接種歴が不明な人や、2回接種が確認できない人が多いことが、現在の発生状況の背景のひとつと考えられます。

一方で、ワクチンを2回接種した人のなかにも、時間の経過とともに抗体価(血液中の抗体の量の目安)が低下した人がいて、こうした人も感染しやすくなっているものと思われます。ただし、ワクチンの2回接種は、発症や重症化、周囲への感染リスクを下げるうえで非常に重要です。


●自分と家族のワクチン接種歴の確認を

流行中の麻疹は軽視できない感染症であるため、警戒を促す目的でニュースに取り上げられることが多くなっています。感染者の立ち寄り先や利用した交通機関の詳細を報道するのも、思い当たる人に発熱やせきなどの初期症状が現れたとき、速やかに電話連絡をしたうえで医療機関を受診するよう促すためのものです。

いたずらに恐れる必要はありませんが、自分や家族のワクチン接種歴を改めて確認し、未接種や1回接種、あるいは不明の場合は、医療機関や保健所・保健センターなどに相談しましょう。抗体の有無や量の目安がわかる「抗体検査」を受けたい場合も、あわせて相談してみましょう。


※国立健康危機管理研究機構の発表(2026年第14週)より


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監修

帝京大学医学部 微生物学講座 教授

吉野友祐